High and dry(はつ恋) (文春文庫)

High and dry(はつ恋) (文春文庫)

High and dry(はつ恋) (文春文庫)


年の離れた人とのプラトニックな恋。
親が子に注ぐ愛。
キラキラとまぶしくて、抱きしめたくなるような
愛おしさが詰まった本。
温かみのあるイラストもかわいらしい。
ラストではルーシーの「june replay」が頭をよぎった。
永遠に閉じ込めておきたくなる 恋の一番しあわせな瞬間。


いろいろななつかしい感覚があった。
感情をもてあましていた幼い頃の、
自分の持っている感情の強さが
いつか自分をこわすのじゃないかという恐怖感。
移り変わっていくものの切なさ、美しさ。
子どもからおとなになっていく過程の気づき。
いつも親の魔法に守られてきていて、
そしてたぶん今もこれからもそうであるだろうこと。



「そういう人はいるんだよ、ほんとうに。」
そのくだりはきゅーっと熱くなった。


私には本当にいたのだ、そういう人が。
本質的な部分をみて初めて愛してくれた
年の離れた最初の恋人。
私が私であるだけで、宝物のように慈しんでくれた。
年下扱いすることなく、一人の人間として尊重してくれて
むしろ尊敬すらしてくれていた。
人を愛することは、相手と自分自身の両方と向き合って
受けとめることだと教えてくれた恋。


時間が経つにつれて おたがいの想いが強くなり過ぎて、
離れている時間は身を切られるように辛かった。
結婚するか別れるかのどちらかしかなくなって、
彼は一日も早い結婚を望んでいたのに、
私は結婚を自分のことと考えるにはまだ若すぎて
別れを選んでしまった。


別れのとき、一生君のファンでいる、と言ってくれた。
それからもう10年以上になるけれど、
私が泣いてばかりいた時期、
私が悲しんでる夢を見て心配してメールをくれた。
普段ほとんど連絡をとっていないのに。
最初の恋人がその人だったのは
とてもとても幸運なことだと、今でも思う。


自分の初恋を追体験したみたいに、
読み終えてしばらくの間 ドキドキがおさまらなかった。
またあんな風に、本質的な部分で惹かれ合う恋がしたい。