パリ、テキサス/ベルリン・天使の詩

ヴィム・ヴェンダース監督作品の二本立て。


パリ、テキサスがとてもよかった。
主人公の「愛」ゆえのどうしようもない不器用さと、
愚かさと、彼なりの最後のやさしさが、哀しくせつない。
愛すれば愛するほど相手を傷つけたり、追い詰めたり、
相手に何かを求めてばかりの「愛」は、自己愛だと思う。
ようやくそのことに気づいて本当の愛を得られても、
取り返しのつかないこともある。
やりきれない気持ちにもなるけれど、愛情が胸に迫る。
映像も音楽も美しかった。



ベルリン・天使の詩は、美しい映像と詩のようなことば。
永遠を生きるより、生きている実感がほしい天使は、
感覚と色を得て人間になった。
とすると感覚や色を大切に思う私は、日々自分が
生きていることを実感したいということなのか。
好きなシーンやセリフもいくつかあったのだけど、
前者ほど心を動かされなかった。
2本目に観て疲れていたこともあるけれど、
抑揚のないドイツ語の哲学的なセリフが静かな口調で
続くところでは眠気に誘われてしまった。
一組の男女の愛を通して人類愛を伝えたかったのだろうと
思うけれど、複雑な分、受け手に伝わるものが減って
しまったような印象。



つくづく私は過程を描いた作品が好きなのだと感じた。
人の内面の成長や深化や、人と人とがおたがいに反応し合って
関係が始まったり深まったりするような。
好きな映画を思い返してみると、ほとんどがそう。
こどものころから自分の内面とその変化に目を向けてきたし、
瞬間湯沸し器のような恋愛とも無縁で、人間関係においては
続いていくもの、積み重なっていくものを志向するからなのかも。
暗いといえば暗いし、鈍くさいといえば鈍くさい気もするけれど。
私には一瞬よりも過程の方が、よっぽどドラマチックで
奇蹟みたいなのだ。