東京物語/麦秋

小津作品の二本立て。
どちらももちろん素晴らしい映画だけど、
後味が軽やかな麦秋のほうが好き。


麦秋は年頃の娘の結婚が題材になっているだけに、
いろいろ感じ入るところがあった。
結婚に対して、周囲の人が望むものと、娘が望むもののちがい。
でも最終的には娘がしあわせになることが一番で、
親は娘の幸せだけを願っている。


条件のそろったいわゆるいいお相手を見つけることよりも、
心から安心できる人に出会うことの方がよっぽど難しいと思う。


ちょっと前に友達に言われたことばを思い出した。
人がうらやむものをたやすく手に入れられそうなのに、
わざわざ損なほうを選ぶよね、って。
別に損得勘定して損なほうを選んでいるわけではなくて、
自分の心に正直に従っているだけなのだけど。


映画の中の紀子と同じ状況だったら、
私もたぶん同じようなことを言って、同じ答えを出すだろう。
優雅な暮らしでも心が空虚なんていうのは嫌で、
何があってもこの人となら大丈夫、って思える人がいいから。
やっぱりのん気とか甘いとか言われるのかもしれないけれど。