すれちがい

年末にリセットに入ってから、何かあっても、
胸の痛みがだんだん弱まっていくのを感じてた。
最近は、みんな恋愛してるんだなぁ、
なんて他人事のように思ったり、
恋愛を描いた歌や映画や本への関心が
薄くなっていったりして、自分がもう恋愛の、
少なくとも真っ只中にはいないことを知った。
変化を欲していることも。


相手が発するもの、状況から感じとったものを、
私はひとつひとつ想いを昇華させる材料にして
積み上げていった。
だけど、相手の本意は逆の方向にあった。
年度末の一週間、私はリセットの作業を一気に加速して、
本意を知らされたときには、自力ではもう温度を
保てないところまできていた。


もう手後れなんでしょ、って何度も聞かれてつらくなった。
本当は、手の施しようがないわけではないのかもしれない。
たった一人特別な人にだけ向ける特別な優しさをもう一度
享受したいのなら、相手に情熱を傾けてもらうしかないけれど、
相手はそういうことができる状況にはないと思った。
答えを出したはずなのにそれでも揺らぎ続けてしまう人を、
自分がどうしたいかさえわからなくなっている人を、
もうこれ以上迷わせるわけにはいかないって、思った。
だから私という選択肢を自分から消した。
わざとサバサバ平気そうなフリをして、
腹を立てさせるようなことまで言ってしまった。
嫌われたくなんてないのに。


恋愛を除いてもお互いにとって貴重な存在だから、
一番近くにはいられなくなっても、
近いところにはずっといられると思ってた。
そう約束も、していた。
私が相手に対する想いのうち恋愛感情だけうまく
昇華させられたら、それが叶うし、
相手もそれを望んでいた、はずだった。
だから、安心してリセットにとりかかっていたのに、
約束は守られないことになってしまった。
それも、あまりにも突然に。


私に対する気持ちが風化するまで連絡を絶つ、と。
それには相当長くかかる、と。


その間。
私から連絡することは禁じられて、
何を伝えることもできなければ、
様子を知ることもできない。
電話でこんなことになってしまったから、
直接会って話をすることもできなかった。


ありとあらゆるものの感覚を共有できる人だから、
存在が大きすぎて。
まだあまりのショックに実感すらないけれど、
日常にぽっかり大きな穴が開いてしまう。


その人の不在がただたださみしいこと以外、
今はほとんど何の感覚もない。