ティンブクトゥ

ティンブクトゥ

ティンブクトゥ

数年ぶりに文学作品のハードカバーを買った。
elisaさんの考察を読んで、ぴぴっと反応した。
あ、これはすぐに読みたい、って。
私の好きな映画の1本である「スモーク」の原作者の作品だし、
ちょうど読める時間もつくれるタイミングだった。
買ってすぐ、勢いにのって一気に読んだ。



犬から見た人間の世界。
現実と夢、記憶が交錯する物語。
サンタクロースの啓示を受けて、
善を行おうとする放浪詩人。
キリンジの「千年紀末に降る雪は」が頭をよぎった。


冷たさの中のあたたかさ。
不確かの中の確かさ。
不幸せそうな中の幸せ。
愚かさと善。
さりげなく散りばめられている
心に響くことばたち。


いわゆるハッピーエンドではない。
外側だけを見たらむしろ悲惨なのかもしれない。
けれど、この犬と飼主にとっては最高の
ハッピーエンドなのだと思う。


読み進めながら、物語と逆の立場から
いろいろと思いをめぐらせた。
愛犬と一緒に過ごしていた日々。
犬が何を考え、何を伝えたがっているのか、
汲み取ろうとしていたこと。
犬も、私の気持ちを感じ取ってくれていたに
ちがいないと思えること。
深い感情の交流ができるような、
人格のようなものの存在を疑わせないかしこさ。
人と犬の時間の流れ方はちがうから、
犬は私をおいて逝ってしまったけれど、
ティンブクトゥできっとまた会える。