記念写真

記念写真というものが、小さなころから苦痛だった。
自分の姿を写真で見たいという気持ちもないし、
美しい風景を前にしたらただ眺めて
いろいろ感じたりしていたかった。
どこかへ行ったとか、こういうイベントがあったとか、
証拠を残すためのような気がして、気が滅入った。
なにより写真のために表情をつくらされるのが嫌いだった。


いつもいやいや撮られていたから、
子どものころの写真は頑なな表情か、
人の影に隠れるようにしているものばかり。
日々成長する子どもの姿を残しておきたい親心を思うと
ちょっとかわいそうなことをしたかもしれない。


大人になって、多少は態度が軟化してきたけれど
それでも自分からすすんで撮ろうなどとはしない。
記念写真は、不自然なもの。
不自然なものは、気恥ずかしい。
そういう認識は変わらなかった。




昨日 撮ってもらった1枚の写真が、
私の苦手意識をくつがえそうとしている。
写真展に居合わせた友達の写真の先生が
撮ってくれたもの。


光の射し込み具合をみて、瞬時に構図を決めて
さらっと撮ってくれた。
表情をこわばらせる暇もないうちに。
さすがプロ。


春の陽射しのやわらかさや、ぬくもり。
ギャラリーカフェのレトロな雰囲気。
和やかな空気まで写しとったようで。
まったく違和感がない。
こういう記念写真ならとっておきたい、と心から思う。


こういう写真が撮れるようになれたらいいな。
私もいつかその先生に習ってみたくなった。